招待講演
特別公開講演(日本語)
講師:西村 剛 氏
演題:ワニはうなり、サルはなく: 音声言語を支える形態進化
西村剛博士は、大阪大学大学院人間科学研究科の教授で、生物人類学を専門としています。博士の研究は、人間の音声器官の進化的発達と、それが言語やコミュニケーションに果たす役割を探求するもので、進化生物学、霊長類学、音声学の知見を組み合わせ、人間特有の音声能力を支える解剖学的適応を明らかにしています。
これまでの業績として、2004年に日本霊長類学会高島賞を受賞、2020年にはイグノーベル賞を共同受賞、さらに2024年には文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞しています。2022年に発表された論文「Evolutionary Loss of Complexity in Human Vocal Anatomy as an Adaptation for Speech」(Science誌掲載)では、国際研究チームを率いて、人間の声帯の構造的簡略化が複雑な言語音声の発達に果たした役割を明らかにしました。この研究は、解剖学的適応と言語進化の関係に新たな知見をもたらしました。
大阪大学では、生物人類学や進化科学に関する講義を担当し、学生とともに学際的な研究に取り組んでいます。現在の研究テーマは、発声メカニズムの種間比較を解剖学やモデル実験やシミュレーションなど工学的なアプローチも取り入れて進めており、その進化的過程を明らかすることにより、人間の言語進化についての理解を深めることを目指しています。
論文詳細: https://doi.org/10.1126/science.abm1574
研究室ウェブサイト: https://bioanthro.hus.osaka-u.ac.jp/
基調講演(英語)
講師:武内 ジェイ 氏
演題:L2-Japanese Speakers and the Sociolinguistics of Ehime Dialects
武内ジェイ(博士)は、米国インディアナ大学東アジア言語文化学部の日本語准教授です。日本語社会言語学および応用言語学、第二言語習得、外国語教育学の研究を行っております。日本で生活する日本語第二言語話者に興味を持ち、特に地域社会、職場、プライベートな場面で出会う方言や敬語などの日本語のスピーチスタイルをどのように取り組むかに関心を持っております。インディアナ大学では、日本語や社会言語学のコースを担当しております。2023年の著書『Language Ideologies and L2 Speaker Legitimacy: Native Speaker Bias in Japan言語イデオロギーと第二言語話者の正当性:日本におけるネイティブスピーカーバイアス』は、日本で生活している日本語の非母語話者にフォーカスし、ネイティブスピーカーバイアスが第二言語話者の正当性をどう影響するかを分析しております。最近の研究プロジェクトでは、コードスイッチングや言語的マイクロアグレッションに焦点を当て、日本語の非母語話者のアイデンティティやアクセントなどのマーカーが日本社会での受け入れにどのように影響するかを考察しております。
以前、愛媛に12年間住んでおりました。
書籍詳細:https://www.multilingual-matters.com/page/detail/?K=9781800414648
研究者ウェブサイト: https://www.jaedibellotakeuchi.com/